1960年の園田競馬と聞いて何があったと答えられる人はもうこの世には存在しないかもしれない。
そもそも兵庫県競馬の歴史を紐解いていくと、1973年4月以前を遡ることの困難に直面し、せいぜいWikipediaで楠賞の歴代勝ち馬を知ることができるくらい。
先日、数年ぶりに楠賞が復活した。
この楠賞も、休止された時のサラブレッド競走としての楠賞しか知らず、アラブの全国交流競走として実施されていたことを知らないファンもいただろう。
それは、それだけ新しいファンが獲得できているということになるのでそんなに悪いことではないと思うのだが、やはり忘れ去られていくのは寂しいもの。
楠賞がアラブの重賞だったということを知らないファンは、兵庫県がアラブだけで競馬をやっていたことも知らないかもしれないし、そもそもアラブが何なのかも知らないかもしれない。
兵庫県がアラブだけで競馬を行っていたことを知っているファンの中でも、兵庫で障害レースが行われていたことを知っている方はほとんどいないだろうし、アラブだけになる前にはサラブレッドの競走も施行されていたことを知っている方に至っては当時を知っている方を除くとまず知られていないだろう。
今回は障害レースの重賞競走が行われた1960年7月31日の園田競馬の出走表と結果を記載していく。
夏季は福山競馬が夏休みになるため、各地に福山を主戦にする人馬が滞在遠征しており、この日は那俄性・上原の2名が参戦。
なお、上原騎手が騎乗するヒメサカエは同年の福山でも出走しており、関西遠征時に福山より連れてきたものと思われる。
福山では障害競走は実施されていないが、障害競走を実施している競馬場では福山の騎手も障害競走に出場していた(この日は騎乗なし)。
2024/01/09
1960年7月7日の出走表が手元にあったので追記する。
なお、競走成績は一切不明。
1960年7月7日(木) 園田競馬出走表
1レース アラ系 800m
2レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | クリフジ | 56 | 山本勝 |
2 | ニユートツプ | 54 | 長田直 |
3 | タビツバメ | 54 | 西村昭 |
4 | キンモアー | 56 | 坂田 |
5 | ニユーラツキー | 56 | 長田昭 |
3レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | タツハヤ | 54 | 山崎 |
2 | エストケイ | 52 | 山本勝 |
3 | リユウコウ | 52 | 中村清 |
4 | ワイオミング | 54 | 万城 |
4 | クインヒカリ | 52 | 橋本直 |
5 | マサカゼ | 54 | 大塚 |
5 | コイノセ | 54 | 太田 |
6 | フクチドリ | 52 | 井上貞 |
6 | セイフウ | 52 | 柿木 |
4レース アラ系障害 1800m
5レース アラ系 1300m
特記事項
カチズキの血脈は広く枝葉が伸び、フイールドラツキーが笠松と盛岡で重賞勝ち、ミスジヤイアントが96戦42勝を記録、他に重賞で好走も優勝までには至っていない競走馬が複数。
6レース アラ系 1300m
7レース アラ系障害 1800m
8レース サラ系 1800m
特記事項
ヤツリはセツリの誤植の可能性があり、セツリであれば昭和33年に障害競走で優勝の記録がある。
またセツリは同年の春までの福山競馬で出走しており、その際には優勝やトルースカツプの2着がある。
この競走はハンデ差が大きいため、当時のサラブレッド競走の最上位か、サラブレッドの頭数が少なくなり実力差が大きいかのいずれかであろうか。
9レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | タカミドリ | 56 | 万城 |
2 | カツオー | 56 | 永井秀 |
3 | ヘンリツクス | 56 | 芳井 |
4 | ミスターハリマ | 56 | 石戸谷 |
5 | ゴールデンカツプ | 56 | 溝橋弘 |
6 | タカトミ | 54 | 米玉利 |
10レース アラ系 1300m
11レース アラ系 1800m
特記事項
ミスセントは全日本アラブクインカップを2連覇したザパルテノスの母母母。
12レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | フクイチ | 55 | 坂本 |
2 | イズモヒカリ | 57 | 永井秀 |
3 | アサマリー | 57 | 藤原 |
4 | ニユーキング | 57 | 増田 |
4 | ハヤカゼ | 57 | 上塩入 |
5 | サチモア | 57 | 山口 |
5 | ゴンリユウ | 57 | 中村正 |
6 | パインフラワー | 55 | 中村清 |
6 | グンマステーツ | 57 | 米玉利 |
1960年7月31日(日) 園田競馬出走表
1レース アラ系 1300m
1-3 240円
特記事項
スターレーの産駒ミナミキンセイは種牡馬入り
これはおそらく生産者自身の牧場で繋養されていて、同じく自身が所有する繁殖牝馬に種付けをしていたと思われる
メイケイの母がしきしまというひらがな表記の馬
本当にひらがなで登録されたのか表記のミスなのか不明だが、こういった調査をしていて初めてひらがな表記の馬に出会う
そんなことをツイートしたところ
表記ミスではなく、ひらがなで登録された馬もいたようです。数は相当少なそうですが。 pic.twitter.com/NOrNtogyja
— ビッグワン (@umauma1987) 2018年11月15日
中央で走っていた「しきしま」の産駒です。相当足は遅かったようですが・・・。 pic.twitter.com/XT4rcfvlid
— ビッグワン (@umauma1987) 2018年11月15日
貴重な情報を提供していただき本当にありがとうございます
2レース アラ系 800m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | フジタカラ | 53 | 山田 |
2 | フジクイン | 53 | 藤本年 |
3 | シマムスメ | 53 | 伊藤亭 |
4 | ワールドセイハ | 53 | 前田 |
4 | ダイイチメイロー | 53 | 上田岩 |
5 | ナルミキング | 53 | 河瀬 |
5 | チヨスター | 53 | 垣内 |
6 | ハイライト | 53 | 山崎 |
6 | カツヒメ | 53 | 葛城 |
1-6 1520円
特記事項
800mという距離、生年が1958年の馬ばかりなので新馬戦か旧3歳馬戦が濃厚
3レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | イチヨシフミ | 56 | 大石 |
2 | カツマサル | 54 | 大塚 |
3 | ハピエスト | 56 | 中村清 |
4 | ミナトヒカリ | 56 | 稲田 |
2-1 200円
4レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | オーゴンヒメ | 54 | 屋敷 |
2 | スーフジ | 54 | 山崎 |
3 | フクステーツ | 56 | 那俄性 |
4 | キングオー | 56 | 山本昭 |
5 | マヤカワ | 54 | 立田 |
5 | マヤタマ | 52 | 坂本 |
6 | カツキング | 56 | 坂田 |
6 | マンリ | 52 | 浜口政 |
6-1 2000円
5レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | トヨリヨウ | 56 | 河瀬 |
2 | ヒメサカエ | 55 | 上原 |
3 | セイフウ | 52 | 柿木 |
4 | トミヒメ | 52 | 山田 |
5 | タカオー | 54 | 立田 |
5-1 350円
特記事項
タカオーのリンクは同馬かの確証はないが、もし同馬であれば岡山県産馬のビツチユウキングに繋がる馬ということになる
岡山県産のアングロアラブ
レースには出走していません
生産者は神郷乗馬クラブの代表の小早川氏https://t.co/lzidRA0Y6x
↑の全兄は生産者名が空欄ですが馬名がビツチユウキング(備中王)https://t.co/O9dCvzSYL8
備中は岡山にある地区で、岡山産の可能性が高いです— 昔の福山競馬のブログの人 (@FCK_no_blog) 2018年9月10日
6レース アラ系障害 1800m
6-5 500円
7レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | セイリユウ | 56 | 永井秀 |
2 | センプーイチフジ | 56 | 阿部 |
3 | キンシヨウホマレ | 56 | 山崎 |
4 | ミスアサギリ | 54 | 菅谷 |
4 | カントウホマレ | 56 | 田中義 |
5 | コマヒビキ | 54 | 長田直 |
5 | ホウイチ | 56 | 葛城 |
6 | フロント | 54 | 立田 |
6 | アンレツツ | 54 | 坂本 |
5-1 910円
8レース アラ系 1300m
5-2 290円
特記事項
タマヒカリは同馬と思しき馬が複数いたが、斤量が重いことから牡馬の方と判断しそちらをリンク
9レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | ナスオー | 55 | 南次 |
2 | タカホマレ | 56 | 河瀬 |
3 | ダイニユキヒメ | 52 | 碇 |
4 | モリチカラ | 56 | 山崎 |
4 | チチブ | 56 | 藤本功 |
5 | ラツキータカオー | 54 | 米玉利 |
5 | トサユキ | 54 | 葛城 |
6 | マルサ | 54 | 小国 |
6 | ダイニハヤブサ | 56 | 鴨林 |
6-4 350円
特記事項
タカホマレはリンク先と同一の馬である可能性が他と比べて低い
10レース アラ系 1800m
4-5 3060円
特記事項
斤量にばらつきがあり、かつ60キロを超える馬もいることから当時のオープンか準オープンに該当するクラスの競走の可能性がある
トシヒメの仔キミハツの産駒タマガワホースは1972年のアラブジユニアー、東京銀賞、1973年の開設記念(川崎競馬)に優勝し種牡馬入り
その産駒の中で福山にゆかりがあるのはスプリンターカップ優勝馬のホワイトタマガワ
タマガワホースの妹パルトンダツシユの産駒ミヤマラツキーは1981年第5回高知競馬5日目に出走している
トシヒメの仔のロードスはJBISでは出走歴が確認できないが福山で見かけたことのある馬で、馬主が高本十七一氏なので最終所属地は福山である可能性が濃厚
トシヒメの仔のダイニキーエースの馬主が武田孝氏となっているが、福山競馬に出場していた騎手の中に同名の騎手がおり、同一人物である可能性がある
11レース 園田アラブ系障害特別 2300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | オキタマ | 52 | 上塩入 |
2 | ダイサンタイカイ | 53 | 小国 |
3 | キヨウミヤ | 51 | 紺原保 |
4 | アカギタカラ | 55 | 榎本 |
4 | カネトミ | 52 | 吉田保 |
5 | セントハヤオー | 61 | 茂崎 |
5 | ツキヒロ | 55 | 葛城 |
6 | マイアミ | 53 | 稲田 |
6 | ギオンホマレ | 58 | 小森 |
6-3 1520円
特記事項
この競走は1969年まで開催されていたことが確認できており、この年のこの競走の出走条件は「当年の園田競馬重賞勝馬以外」であった
こちらのギオンホマレとこちらのギオンホマレはページが異なるが同馬である
12レース アラ系 1300m
枠番 | 馬名 | 斤量 | 騎手 |
---|---|---|---|
1 | タイセンノニ | 52 | 米玉利 |
2 | ミスフジコマ | 54 | 長尾利 |
3 | プレイガイド | 53 | 碇 |
4 | セントローテ | 56 | 福地 |
5 | ビーナスクイン | 52 | 河瀬 |
4-3 200円
コメント
兵庫にも障害戦があったんですね。
戦後の初期にはトロットレースも
あったとか……またアラブ専門に
なる前のサラブレッド競馬で申しますと、
なんと天皇賞馬オーエンスが競走生活の
晩年を兵庫で過ごした経歴を持つそうで(@_@)
姫路は1960年代後半まで、園田は70年代前半まで行われていました。
姫路は1950年代には既に障害競走を行っていたことが判っており、当時では珍しい固定障害を導入したそうです。
オーエンスの最晩年は下関競馬に出場していたと聞いたことがあり、春木や長居でも出場していたと何となく記憶しています。
ですが兵庫に出場は初耳です。